5章 発見のエンジン
やや異色な章である。効率的に、素早く答えを見つけるための情報検索ではなく、タイトルにもあるように「発見」のための情報検索の話がメインになっている。平坦でまっすぐな道をずっと歩いていたんじゃわからない。寄り道をしながら楽しみながら意外なヒントを得る。そんなちょっとした仕掛けが凝らされている情報検索システムたちが次々に登場する。
- 「どれもGoogleのような生活必需品というわけじゃないが、検索のセレンディピティに独自のひねりを加えてくれる。僕らはセレンディピティを求めて釣り糸を垂れ続けなければならない。手っ取り早い答えはもう釣り上げてしまったからだ。発見のエンジンにはこれからの検索を編み出す責任がある。 p.162」
とあるように、確かに手っ取り早い答えはGoogleが教えてくれる。それ以外の「発見」につながるようなセレンディピティを生み出すような情報検索の仕掛けを具体的なウェブサービスを例に読み進めることができる。
- パーソナライズ機能や協調的フィルタリング、推奨システム、発見エンジンなどが成果を上げる可能性がある。だが、ソフトウェアのアルゴリズムでなんとかなるのはそこまで。<中略> 僕らの頭こそが本物の発見エンジンなのである。 p.139
以下、カテゴリー、トピック、フォーマット、オーディエンス、プラットフォーム、モードに場合分けをし紹介している。(「 」内が引用部分を示す、章-節の節は長屋が独自に付け足してます)
5-1 カテゴリー
IBMではイントラネット内で「Dogearというツールを公開し、BluePagesという従業員ディレクトリなどのサービスを展開 p.140」
していたという。Web2.0という言葉もない頃で、「ソーシャルデータをフル活用して検索とソーシャルネットワーキングを向上させるべく、企業内ソーシャル検索のプロジェクトも立ち上げ p.140」るなど先駆的な試みが行われていた。
けれど、数々仕掛けられたソーシャルコンテンツへと導いてくれる便利なタブをだれもクリックしなかったという。そこで「ソーシャルコンテンツがインターフェースの全面に出る p.141」よう変更したことで「クリック数はたちまち跳ね上がった p.141」という。
こうした成功事例を元にいくつかのサービスが行っている工夫をみてみよう。
5-2 トピック
- GoPubMed:検索結果をチャートやグラフで見る p.147
- Epicurious:食欲をそそるファセット型ナビゲーション。材料や料理の種類で絞り込み検索 p.147
- Urbanspoon:iPhoneをシェイクし検索結果を出す p.148
5-3 フォーマット
- oSkope:ビジュアル検索アプリケーション p.149
- Delicious:オートサジェストとタグによるフィルタリングと検索結果の視覚化を見事に融合している様子 p.149
- MrTaggy:ソーシャルなタグを頼りにした検索エンジン p.149
- LinkedIn:構造化されたプロフィールデータを活用 p.151
- 「写真専用の検索アプリケーションをデザインしているとするなら、それに特化した検索やインタラクションのモデルを思いのままに試すことができる。焦点を絞ることで自由が生まれ、自由から発見が生まれる。 p.151」
5-4 オーディエンス
- オーディエンスを限定した検索エンジン
- Baidu (kids,Elderly Search)
- Koogle:コーシャー(Kosher)版のGoogle。正統派ユダヤ教徒向け p.153
- International Children's Digital Librarty: 視覚的なファセット型ナビゲーションのモデル p.153
- ChemSpider : 専門職種のコミュニティ向けにデザインされたアプリケーション p.154
- 「ChemSpiderのように専門的なアプリケーションを開発する際に、化学者なら検索などお手のものだろうと思い込んだら大間違い p.154
専門知識と検索スキルをごっちゃにしてはいけない p.154」
5-5 プラットフォーム
Spotlight
AppleのMac OS Xのデスクトップ検索機能 p.155
- 日付によるクエリーの絞り込みや、サーバーや共有ドライブなどの特定の場所だけの検索を簡単に実行 p.155
- 標準的なリストかカバーフローのインターフェース p.155
- ブラウジングしてみたくなる作り p.155
Tivo
- 「Googleがインターネットで成し遂げたことを、いまTiVoがテレビでやっているのです。他のサービスには真似できない、優れた検索結果と革新的な発見を合体させてみること p.156」
- 「双方向テレビのデザイナーにとっては、異論はあるもののウェブがパターンライブラリーの役割を果たしている。しかし、iTVでの革新がいずれはウェブの方に逆流してくるのは間違いないだろう p.157」
Redbox
- アルファベット順索引と"ジャンル別一覧"機能によって、比較的小規模で構造化された映画作品カタログにアクセス p.158
5-6 モード
Aardvark
- 自分の友達や、友達の友達、クラスメート、同僚、果ては近くにいる赤の他人にまで広がるユーザーのネットワーク上で、回答者にふさわしい人物に質問を向ける高度なアルゴリズムを採用した"ヘルプエンジン" p.159
- ちょっとした人助けをしようという自発性をユーザーからうまく引き出している p.159
- ナレッジマネジメント用の革新的ツール p.159
Hunch
- ユーザーとソフトウェアを巻き込んで、デシジョンツリーを協調的に作り上げ、改良していく。 p.159
- 集合知による意思決定システム p.159
- 単純な質問と回答の連なりが、学習や発見を生む刺激となる場所だ p.160
- 興味深い答えをくれるだけではなく、ユーザーがきちんとした質問をするよう促す p.160
Ambiently
- 質問をするまでもなく回答を出してくれる p.161
- どんなウェブページからでも、ボタンをクリックするかブックマークレットを用いるだけで、それと類似した意味を持つページや関連トピックを扱っているページの一覧を示す「Ambient Page」を見ることができる p.161
- Ambientlyは専門家が用いるパールグローイングの手法を誰もがより手軽に活用できるようにしている p.161
StumbleUpon
- 必要なのは質問ではなくクリックだ。
- このセレンディピティエンジンの本質は関連度の追及というよりはランダムな発見の喜びにある p.161
- 検索ではみつかりっこない愉快なもの、面白いものを見せてくれる p.161
2/30(水)にもうちょっと編集予定です