3章: 行動
全体
「検索にもその構成材料となる行動のパターンやインタラクション要素、デザイン原則がある。それらは常に流動的だ。 (p.56)」とあるように検索システムの構築・設計の作業は利用者の情報検索・探索行動との対話となる。これが第3章のテーマだ。
またジャズの演奏に例え「かつてルイ・アームストロングが語ったように、「同じような演奏を繰り返しちゃいけない」(p.86)」と最後に締めている。「3-1 行動のパターン」「3-2 インタラクションの要素」「3-3 デザインの法則」といった3章の各節で展開される利用者の情報検索行動パターンとアンチパターン、インタラクションの要素、デザインの原則を参考にし、その時々の状況に合わせた検索システムの構築・設計が必要であることを教えてくれる。
以下、各節(1〜3)の気になった部分の抜き書きを中心に掲載する(抜き書きはリストにて表示)。なお、3-1-1(章-節-段落)の節と段落の連番は本書には採用されているものではなく、長屋が独自に追加したものである。
3-1 行動のパターン(p.56-p.65)
この3-1では利用者の行動のパターンとアンチパターンを述べている。検索システムなどを設計する際にこうした利用者の行動パターンを想定することが必要だろう。
3-1-1 検索の中止
- 検索は出口で終わる。 p.56
- 中止は分析を要するパターンだ。 p.56
- 「検索結果なし(No Results)」と無愛想にユーザーをあしらっていないだろうか p.57
- フィードバックと次に進むべきステップをうまく組み合わせて p.57
3-1-3 ファセット型
- ファセット型検索はそのマップにメタデータを付けてくれる。 p.59
- Artist Risingでは、こうして豊富な絞り込み方法を用意している p.59
- 蔵書データベースのシソーラスブラウザーの例 p.60
3-1-4 パールグローイング
- 検索スキルの高いユーザーはインタフェースとは無関係に、パールグローイング(真珠の成長)と呼ばれる特殊な戦略を用いて拡張を行う p.61
- 良さそうなドキュメントを一つ選んで、そのコンテンツとメタデータの中からクエリー向きの語句や手がかりを探り出す手法 p.61
3-1-5 レコメンデーション
- Googleの「類似ページ(Similar)」リンク p.62
- 音楽関係のレコメンデーションシステム p.62
- 知っている曲と知らない曲の属性やレート(評価)、協調的フィルタリングのデータなどを比較 p.62
- iTunesのGenius機能は、ユーザーの個人的なコレクションの中にどんな曲があるのかを重視 p.62
- 一つの曲をきっかけに、それに似たたくさんの曲をみつけて買ったり楽しんだりできる p.62
3-1-6 アンチパターン
- これまで登場した行動のパターン−中止、絞り込み、拡張、パールグローイング−は、時を超えたもの p.62
- これ以外のパターンは、出来の悪いパターンから生じる p.62
3-1-6-1 ホッピング
3-2 インタラクションの要素 (p.66-p.71)
既存のPC,Macなどのインタラクションとモバイル端末のインタラクション、そして新たな入力センサーによる新しいインタラクションの可能性を述べている。
3-2-1 既存のインタラクション
- デスクトップは、もっとも確立したプラットフォームであり、検索への表玄関 p.66
- マウス、キーボード、モニター、スピーカー p.66
- ロールオーバー、クリック、キーワード入力が主なイベント p.66
- メニューやボタン、フォームの入力フィールド、リンクが、基本的なインターフェースのイディオムとなる p.66
- 検索でのリッチなインターフェース要素の例としては、情報の匂いがするウィジット、Ajaxを用いたカレンダー、DHTML形式のスライダー、放射状メニュー、動的なトランジション、透過型オーバーレイ、ドラッグアンドドロップ可能な検索結果表示、詳細表示用ウィザードなど p.66-67
3-2-2 モバイル
- モバイルプラットフォームはかつてない勢いで成長 p.67
- ちっぽけな画面やキーボードという制約が加わることになるだろうが、モバイルはインタラクションの新たな素晴らしい地平を切り拓く p.67
- マルチタッチ機能はタップして拓いたり、ピンチしてズームしたり、フリックしてスクロールしたりという操作を実現 p.67
- カメラやマイク、スピーカーが多感覚的I/Oを可能に p.67
3-3 デザインの原則 (p.71-86)
「「デザインとは、どう機能するかだ(Design is how it works)」 p.73」 というスティーブジョブスの言葉にこの3-3の内容がすべて詰め込まれている。「よく練られたインターフェースを目にすれば、その核となる特徴やレイアウトは、考えるまでもなく潜在意識のレベルでわかる p.71」。たとえば、「Googleはもっと短い「Did you mean(もしかして):」というテキストを検索結果の直前と直後に表示するようにしてみた。すると、利用頻度が跳ね上がったのだ p.72」という例からもデザインの重要性が現れている。「表示領域には、できるだけ多くの情報を詰め込みたい p.72」「情報の密度は、エクスペリエンスを向上させ効率化する要因の一つだと認識 p.72」と続けながら「ユーザーを素早く通過させること p.72」ことが重要だとする。
3-3-1 少しずつの組み立て (Incremental Construction)
- ユーザーがスタートもせずに終わってしまったら、検索は反復的でインタラクティブになりはしない p.73
- ユーザーには適切なデフォルト設定 p.73
- 1つ2つのキーワードでこじんまりと始められるように p.73
- ボックスはオートコンプリートや寛容なフォーマットに対応していることを堂々と示すべき p.73
- ファセットやフィルターを追加したり、気になる脇道へと進んでいけるように p.73
- アンドゥ(操作の取り消し)機能も用意 p.73
3-3-2 段階的な追加表示 (Progressive Disclosure)
- 多くのルートを経由して同じ目的地に到達できるようにすれば、少しずつの組み立てと段階的な追加表示のどちらにもうまく対応できる p.75
- 機能の強力さとシンプルさとの最適なバランス p.74
- ファセット型ナビゲーションも、それに似た段階的なデザインパターン p.74
3-3-3 即時応答 (Immediate Response)
- パフォーマンスの悪さは、どんなインターフェースでも脱線事故のようにユーザー足止めさせてしまう p.75
- 今では、オートコンプリートやオートサジェストの導入によって、クエリー実行前に結果がでることさえある p.76
3-3-4 代替ビュー (Alternate Views)
- 同じ情報に至る複数のルートを用意することで、すべてのユーザーに自由をもたらす p.79
- Viewziでは、18種類を超える検索結果の表示方法を提供 p.77
- この事例を見れば、自分がユーザーにどんなレイアウトやレンズを提供できるか考えさせられるはずだ p.77
- 目が見えない人々に向けた代替ビュー p.78
- 検索もすべてのユーザーにとってアクセシブルであるべき p.78
3-3-5 予測可能生 (Predictability)
- あるジェスチャーが、アプリケーション全体を通じて一貫した操作につながれば、馴化(habituation)によって効率がアップする p.80
3-3-6 記憶に勝る認識 (Recognition Over Recall)
3-3-7 最小限の途絶 (Minimal Disruption)
- 1つのページに(なるべく)留まっていられるのが一番となることが多い p.82
- ページ内でのエラーメッセージ表示や、インライン編集、コンテキスト連動型ヘルプなどの手法を用いている p.82
- オーバーレイ、インレイ、バーチャルスクロールやバーチャルパン、インラインページング p.82
- 額縁を動かすことなく絵の中にコンテンツやコントロールを追加するクリエイティブな手法である p.82
3-3-8 直接操作 (Direct Manipulation)
- GUIは成功に導いたさらなる要因は、直接操作の原則 p.83
- 現実世界のメタファー p.83
- 直接操作によってそれは身体的な記憶に刷り込まれる。 p.83
- Searchmeでは、自分専用の検索結果置き場(スタック)にドラッグアンドドロップで結果を保存しておき、後で見直したり、友達や同僚と共有することができる p.83
- リンクが知覚させるアフォーダンスは、ごくわかりやすい p.83
- 直接操作にこだわりすぎるとアクセシビリティを損なうおそれがあるし、基本的なコントロールだけではパワーユーザーを育てることができないかもしれない p.85
- バランス維持のための対応を常に心がける p.85
さいごに
- 「デザインにもジャズの精神を取り込んでいこう p.86」
- 「新たなリズムへの挑戦を受け入れなければ、フローを見いだしたり、グルーブに身をまかせたり、行動にとけこむデザインを生み出すことができなくなる p.86」
検索と発見のためのデザイン - 4章: デザインパターン(後半p.118〜)
概要
この『検索と発見のためのデザイン』の原著は『Search Patterns』というタイトルです.検索の「パターン」を描き出すことを目的とした本書のハイライトはこの4章と言ってよいでしょう.その後半部分を以下にまとめます.
構成
4章では10個のパターンが紹介されていますが,p.118〜では以下の4つ.どのパターンも具体例とそのスクリーンショットを用いて紹介されており分かりやすいです.前半(〜p.117)にはLibrary of CongressやTriangle Research Libraries Networkのカタログも登場します.
- ページネーション (Pagination)
- 構造化された結果 (Structured Results)
- アクション可能な結果 (Actionable Results)
- 統合的発見 (Unified Discovery)
- 始まりの終わり
章末では,以上の10大パターンは出発点にすぎない,(パターン・ランゲージの創始者である)アレグザンダーは253種類の建築のパターンを提出した,「僕らにとってベストなパターンはまだこれから出てくる」と注意が記されています.
引用・メモ
以下は読んでいて気になった部分.括弧内は引用です.
各パターンが解決できる問題と,パターンを実現するための困難について着目して読んでいたのですがよく分からなくなってきました.
- パターン7:ページネーション (Pagination)
- 問題:検索結果,あるいは検索エクスペリエンスがページ送りによって断絶する.
- 困難:実装コスト.標準的な方法に慣れてるユーザが戸惑う.特定の検索結果集合へのリンクができない?
- Google:この「10個の青いリンク」がデファクトスタンダードになっている
- Bing:スニペットにカーソルを合わせると"More on this page"をオーバーレイ表示する
- Jinii:画像の大きさでソート順を表現する
- Endless.com:インラインページング
- Amazon.com:バーチャルスクロール
- ベストファースト,ファセット型ナビゲーションといった他パターンを組み合わせて検索結果集合を小さくし,ページ送りを多用する必要がないようにデザインすることも大切
- パターン8:構造化された結果 (Structured Results)
- 問題:?
- 困難:?
- Google:検索結果に株価,地図,単語の定義,映画情報,天気などを構造化して表示
- Wolfram Alpha:検索というより「演算処理を用いたナレッジマネジメントのエンジン」「検索結果は、質問への回答になっている」
- Newssift:視覚的ファセット(グラフ表示)
- Endeca:ガイド型サマリー
- パターン9:アクション可能な結果 (Actionable Results)
- 問題:?
- 困難:?
- 検索結果に対するアクション=印刷,保存,共有(Facebook, Twitter, SBM, etc.),など
- Yahoo! Search Pad:検索結果一覧にメモをつけて印刷,保存,共有ができる
- Searchme:検索したアイテムをスタックにドラッグ&ドロップで保存できる
- Digg:投票やコメントなど.Ajaxによってワンクリックで済むUIを採用すると「活動は激増」
- Hulu:スニペットに再生ボタンがついている
- Yahoo!:ベストベット的にリッチでアクション可能なスニペットを表示
- iPhoneのスポットライト検索:「アプリを起動したり電話をかけたりするための,効率的でエレガントな方法でもある」
- アクションを含めたクエリをサジェストするのはどうだろう?
- パターン10:統合的発見 (Unified Discovery)
- 問題:複数のパターンが統合される
- 困難:?
- 「ユーザは検索とブラウジングや質問といったモードの間を行き来する」⇒このモードをうまく組み合わせる or 統合する
- Yahoo! Glue Pages:YouTube,Wikipedia,Y! Image Searchなどの統合検索?
- Lands' End:「検索結果と、ブラウジングしてたどり着くギャラリーのページ(図4-63)にはほとんど差がない」
- Home Depot:「複数のモードをうまく統合するには、カテゴリーマッチングを最大限に活用するのが一つの方法」 クエリがカテゴリのラベルと一致した場合はカテゴリページを表示するなど.
- 「Amazonでは、検索とブラウジングのどちらから先に始めても、いつでも迷うことなくもう一方のモードに切り換えできる」
まとめ
10大パターンのうち重要なものは前半に出ちゃっていて多少物足りない感じなのですがw,最後のパターン10「統合的発見」は長く考え続けていくことになりそうなテーマです.普段何気なく使っているAmazonですが,
Amazonでは、検索とブラウジングのどちらから先に始めても、いつでも迷うことなくもう一方のモードに切り換えできる (p.138)
という一文にはなるほどとうなづきました.図書館のカタログでもNDC分類によるものなどブラウジング機能が提供されていることは多いですが,検索とは別物という扱いをされていると思います.古くは横断検索,ここ数年ではSummonやEBSCO Discovery Servicesといったdiscovery servicesの登場によってリソースの統合については強く意識されているものの,モードの統合という観点は新鮮でした.
パターン9「アクション可能な結果」の《アクション》というまとめかたもいいなと.ILL担当になって,ILLや貸出といった区分を超えたdelivery servicesという観点からの図書館システム・組織の再構築について興味を持っています.図書館ユーザは検索したものに対して何らかの行動(借りる,コピーする,取り寄せる,良さそうな本なら買う,など)を取るはずですが,どうやったらその行動が取れるのかというナビゲートはいまいちではないでしょうか.ワンクリックでできるアクションをもっと.それがリソースの利用を促進するはずです.
1章 パターン認識
本書「検索と発見のためのデザイン —エクスペリエンスの未来へ」は「Web情報アーキテクチャ—最適なサイト構築のための論理的アプローチ」「アンビエント・ファインダビリティ —ウェブ,検索,そしてコミュニケーションをめぐる旅」の著者Peter Morvilleにより執筆されたものです.
原書版のWebサイト,http://searchpatterns.org/:titelでは,本書で使われているさまざまイラストなどの他,第1章がサンプルとして公開されています.
第1章 パターン認識では,検索サービスに関わるデザイナーやエンジニアにインスピレーションを与えるという本書の目的を明らかにするとともに,検索とはどのような行為か,何を目的に行われる行為なのか,どのような課題を抱えているのかといったことについて説明しています.そして,検索サービスに関わる課題を解決するためには,過去に成功しているパターンを知るとともに,現在あらたに生まれつつある最新の技術動向,それぞれに目配りをすることの重要性を繰り返し説いています.
以下,印象に残ったものの抜き書きです.
- 検索を理解する
- 検索ボックス
- 検索のゴール
- 結局のところ,検索とはファインダビリティの追求に始まり,それに尽きるのだ.(p.7)
- 実は質問と検索の協会はあいまいで,クエリー構文やセマンティクス(意味体系)の違いでほぼ線引きされているのだ.(p.8)
- ブラウジングは時間を要すると同時に,セレンディビティを呼び込む方法でもある.(p.9)
- ファインダビリティを目指すデザインを実践するには,これらの全てのモード(引用者注:検索や質問,フィルタリング,ブラウジング)を検討すべきだ.どのモードも,ゴールを目指す戦術の一つでしかない.(p.9)
- 検索は,自分の学ぶべきことが見つかるような,反復型のインタラクティブなプロセスなのだ.(p.10)
- 学習という要素を取り込むために,探し物をみつける以上のことに目を向けねばならない.(p.10)
- 検索には,理解を深める力もある.検索エンジン結果一覧ページ(SERP)は,クエリーに対してカスタマイズされたマップだと言える.(p.10)
- 検索は,ゴールやクエリー結果を共有する,ソーシャルな体験になり得るのだ.(p.11)
- 検索で問題となるのは,ファインダビリティだけではない.学習や理解,共有,アクションも目的のうちなのだ.(p.12)
- 検索エンジン
- 色の発見
-
- 大抵の人間にとっては,見える物しか信じられないのである.(p.14)
- 検索と発見の未来にはあまりにも多くの可能性があり,アイデアの善し悪しを見分けるのは大変だ.(p.14)
- コンテキスト同士をつなぐ行動やデザインにはパターンがある.(p.18)
-
- 部屋飼いの象
- 地図職人のマニフェスト
- アポフェア再考
-
- 彼(引用者注:クリストファー・アレグザンダー)のパターンランゲージは,よくある問題に繰り返し適用できる(最適な)解法を見きわめ,具体的に示すための体系的手法をもたらした.(p.23)
- このパターン認識においては,過去の実績が未来の結果を邪魔するかもしれない.そこに予測のパラドックスが生じる.未来を見るには,過去を振り返らねばならないのだ.(p.24)
- 中心となる安定したパターンの細部まで目を向けると同時に,周辺で新たに生まれてくる技術にも注目しておかねばならない.(p.25)
- まずそのパターンを見出してから,わざと壊さねばならないのだ.(p.25)
-
図書館の検索サービスに関わるものとして,図書館システムのベンダー間比較ではなく,ユーザーが日常的に使っているであろうGoogleなりAmazonなりと比較対照しなければならない,かつ4年もしくは5年でのシステムリプレイスという現状の制約の上で,サービスをデザインする必要があるということを改めて感じました.また,検索という行為が,単に必要な物を適切に見つけだすことだけではなく,理解や学習その後のアクションにつながっているという指摘も十分に意識する必要があります.
検索と発見のためのデザイン - 2章: 検索の解剖学
概要
この章のテーマは《検索という営みを構成しているのは何か?》です.
検索《システム》ではなく,《営み》.あるいは「ネットワーク」.この問いに対して著者が提示する《答え》は図2-1「検索の解剖図」に描かれています.
2章ではこの図に挙げられた各要素について詳しく見ていくのですが,検索の「戦略とデザインの実践に役立てる」ことを目的としているため,技術的な細部に立ち入らず全体像を俯瞰するスタイルになっています.
構成
2章はpp.27-54,前述の図2-1の各要素に「コンテキスト」をくわえた6つのセクションから成っています.
引用・メモ
以下は読んでいて気になった部分.括弧内は引用です.
- ユーザー
- 「ユーザーの心理や行動は、僕らがどんな種類のシステムを作り上げるかに関わってくる」
- 適合率 vs 再現率:ユーザはどちらを求めているのか
- その分野における「専門性の高さ」と「検索のスキル」は別物
- 検索のモード(既知項目検索,調査的検索)や利用状況(職場のデスクトップPC,自宅のノートPC,店舗内のキオスク端末,タクシー車内でのモバイルデバイス)も考慮する
- 「何が必要なのかよくわからなければ、Amazon方式を参考にしよう」
- Amazonの検索はGoogleとは違って「その結果次第で次に探すものが変わっていくような、反復的でインタラクティブな体験だ」⇒Googleはユーザ自身が意識しないとインタラクティブにならないということかな?
- 「どの状況においても、まずユーザーやその組織がどんな価値を重視しているのかを見きわめ、それを念頭に置いてデザインすることが必要だ」
- インターフェース
- 検索速度の向上,インタラクションの豊富さ,オートコンプリートなどによって古典的な入力(クエリ)と出力(検索結果)の境目はあいまいになってきた
- SERP(Search Engine Result Page)
- エンジン
- 「検索の仕組みをわかっている人間はごくわずかだ」が,デザイナーも「学ばなければならない」
- 「デザイナーの専門知識は、検索へのニーズを明らかにする」
- コンテンツ
- クリエイター
- 「現在の(そして今後現れそうな)コンテンツのクリエイターは誰か?」
- 「どうすればクリエイターのやる気を引き出し、コンテンツを質、量ともに充実させられるか?」
- 「どんなツールやプロセスがあれば、コンテンツをより速く簡単に公開できるか?」
- 「コンテンツの作成や編集をしてくれるユーザーを集める方法は?」
- 「解析データをどのように共有すれば、コンテンツの利用と共同作成をどちらも促進できるか?」
- 「センサーだって一種のクリエイターなのである」
- コンテキスト
- 「シンプルなサイトのほとんどではブラウジングだけで事足り,検索はお呼びでないかもしれない」⇒検索は必ずしも必要ではない
- 「必要なのは、ユーザエクスペリエンスにおけるパス(道)、エッジ(縁)、ディストリクト(区域)、ノード(結節点)、ランドマーク(目印)を示すマップだ。」
- 検索を中心にブラウジング+検索というシステムを作ったAmazonは「優れた一例」
- 横断性:ユーザーは大抵、どこを調べればよいかわかっていないので、そのサイト内の全コンテンツを対象にした検索ができるようにすべきだ。」
- ファセットには「グローバルなファセット」と「カテゴリー特有のファセット」がある
- 「反復的でインタラクティブな検索体験をユーザーが思う存分味わえるかどうか、その最後の決め手となるのはスピードだ。」
- オブジェクト
まとめ
この「検索の解剖図」それ自体は目新しいものではありません.ただ,図書館の世界ではあまり意識されてこなかった,ユーザー心理・行動,インタラクション,アフォーダンス,(コンテンツクリエイターに対する)インセンティブデザインといった観点には注目する価値があると思います.
この章では主に検索の内部について語られているものの,強く主張されているメッセージは視点を外部に向けることだという印象を受けました.再び引用しますが,
検索とは、ユーザエクスペリエンスを共に形成する、情報アーキテクチャとより広大なコミュニケーションの生態系の部分集合でしかないのだ。(p.53)
情報アーキテクチャというと難しいですが,要は《ユーザに情報を見つけてもらいやすくするためのしくみ》ということでしょうか.1章で書かれているようにユーザに情報を提供する方法は検索だけでありません.自組織でどのような情報アーキテクチャ戦略をデザインするか,そしてその「マップ」のなかにどう検索を位置づけるのかを考えましょう.//このあたりの話は特に「コンテキスト」というセクションに書かれています.
どうも著者はAmazonをプッシュしているようですね.
Li:d Techはじまります。
2月になったので、Li:d Techも本格的に活動開始です。
Li:d Techは、技術系の話題に関心のある図書館員が以下の3点を主な目的として活動します。
- 毎月1冊技術書を読む
- 遠隔輪読のやりかたを模索する
- その先のアウトプットの可能性を模索する
今月の課題図書?は「検索と発見のためのデザイン : エクスペリエンスの未来へ」です。
- 作者: Peter Morville,Jeffery Callender,浅野紀予
- 出版社/メーカー: オライリージャパン
- 発売日: 2010/11/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 8人 クリック: 392回
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各担当分を茨城・京都・沖縄でそれぞれまとめていきます。
本当は担当分をまとめるつもりでしたが、本を忘れたのでLi:d Techの紹介を書いてお茶を濁してみました。(大谷)